第92回 イエスは馬小屋で生まれた?


クリスマスが近づくとカトリック諸国ではNacimiento (Bélen, Pesebre)というイエス生誕の場を再現した模型を飾る。飾られる人形は幼子イエス、マリア、夫のヨセフ、牛、羊、ロバから成る。馬の人形はない。筆者の疑問はここにあった。イエスは馬小屋で生れたと聞かされていたからである。改めて新約聖書を見ると、イエス生誕の場面は非常に簡潔である。

マタイ伝:Jesús nació en Belén,un pueblo de la región de Judea. 「イエスはユダヤのベツレヘムで生れた」
ルカ伝ではマリアが初めての子供を産み、布にくるんでestabloに寝かせたとある:Y allí nació su primer hijo, y lo envolvió en pañales y lo acosttó en el establo.

英語版ではestabloがstableあるいはfeeding trough、manger「飼い葉桶」となっている。

Establoとは家畜小屋だが英語のstableの第一義は馬小屋である。幕末か明治初期の日本語訳に使われた原本は英語だった可能性が強い。いずれにしても聖書にはイエス生誕の場に家畜がいたとも、生まれたのが12月25日だったとも書かれていない。

16世紀に日本で布教していたポルトガル人宣教師たちはどのように説明していたのだろうか。ポルトガル語のestábuloも家畜小屋の意味であり、馬小屋に特定した意味はない。当時の家畜小屋がどんなものだったか、一般的に飼われていたのはロバか牛か、あるいは駱駝だったのか。Establoから広がる疑問は尽きない。
(川内)

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