第49回 アメリカ大陸、文明の夜明け


トウモロコシとジャガイモという食料エネルギーの安定確保に成功したメソアメリカ(メキシコから中米)と南アメリカ・アンデス地方では、およそ4000年前には定住的な農村共同体の社会が成立し始めた。

各地で発生した閉鎖的な農村共同体は宗教の力によって大規模な社会共同体へと発展していくこととなるが、個々の農村や狩猟民の共同体にももともと宗教はあった。ただしそれは普遍的なものではなかったため、神または神々と世界を体系的に説明された信仰は、やがて多くの共同体で共有されるようになっていく。その共有された神へ祈るため、祭壇や公共建築物が必要となり、農耕社会により力を持った首長や神官の指揮の下、広場や神殿などが建築されていくこととなる。

先土器時代の神殿はペルーの中部沿岸部で見らえれるが、これは農村共同体ではなく、ペルーの海産資源に基づいた神殿という。ユネスコの世界遺産にも登録されているペルーのカラル遺跡は古代アンデス文明の遺跡で一説によるとアメリカ大陸最古の都市遺跡とも呼ばれるが、ここでは大神殿や多数の住居跡が発見されている。

農耕社会が確立されてからは、特徴的な文様の入った土器や石器とともに神殿が建てられていった。とりわけメソアメリカにおいて代表的な文明がオルメカ文明(紀元前1200頃~紀元前後)、中央アンデスにおいてはチャビン文明だ。オルメカはメソアメリカ文明の母体となったことから「母なる文明」と呼ばれるが、メキシコ湾岸の肥沃な土地を中心に発達していった。オルメカでは人間とジャガーを融合させた神像を信仰し、人間を生贄とする儀式もあった。またゼロの概念や数字や暦などの文明が発達していた。美術としては巨石人頭像でもよく知られている。

一方、アンデス地方では起源前1000年ごろから200年ごろまでチャビン文明が発達していった。チャビン文明では世界遺産に指定されているチャビン・デ・ワンタル(ペルー)の大規模な神殿その痕跡を見ることができるが、石造りの神殿や石彫りのレリーフなど、のちのインカ文明つながる巨石文明の出発点として見ることもできる。ここでは宗教的シンボルとしてジャガー、鳥、蛇、コンドルなどの動物やそれらを一体化させた架空の生き物が石彫りレリーフとして残っている。これらの不思議な生き物も神々の一つであったのだろう。

やがてオルメカもチャビンも衰退していくことになるが、これらの文化・文明で生み出された礎は次の文明や社会においても引き継がれていくことになる。ただし、メソアメリカとアンデス地方では一つ大きく異なる点がある。

それはメソアメリカでは文字が誕生してことだ。また数学や暦の誕生はマヤ文明誕生において非常に大きな意味を持つ。先古典期のアンデス文明では文字は誕生しなかった。数は発明されたが、メソアメリカとは異なり縄で表現されるというものであった。メソアメリカでは先古代後期にはエル・ミラドールと呼ばれる石造りの巨大建造物を有する都市が誕生し後のマヤ文明の基礎を築いていくことなる。

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