第50回 古代メキシコ文明


メソアメリカと南米・中央アンデスの2つの地域はいわゆる「四大文明」と交流することなく独自の文明を形成した。コロンブス以前のアメリカ大陸では100種類以上の植物が栽培されていた。トウモロコシ、ジャガイモ、サツマイモ、トマト、唐辛子、カボチャ、インゲン豆、カカオ、バニラ、アボガド、ピーナッツ、パイナップル、パパイア、ゴム、タバコなど世界の栽培作物の6割がアメリカ大陸の先住民が栽培化したものである。スペインなどが筆頭に切り拓いた新世界との交流は世界の食文化に革命をもたらしたのである。

メソアメリカ、アンデス文明は「インカ、マヤ、アステカ」と混同されてしまい、しばしば神秘的な古代文明として扱われるが、コロンブスの侵略以前のアメリカ大陸の文化や文明に関する記述が貧弱なことに起因しているという。

ここからはメソアメリカ(メキシコ、中央アメリカ)の歴史、特にコロンブス以前(先スペイン期)を中心に見ていきたい。先スペインのメソアメリカを「古代」と呼ぶことがあるが、「石器」(前8000年・狩猟)「古期」(前1800年ごろ)「先古典期」「古典期」「後古典期」の5区分に分けられる。古代エジプト、古代ローマの「古代」とは時代を大きく異にする。

先古典期(前1800年~250年)において土器を有した農耕文化が生まれた。メソアメリカ最初の文明と呼ばれるオルメカ文明(前1200年~前400年)がメキシコ湾岸で発達した。古典期は250年~1000年でマヤ文明の都市国家群の争い続いた時期でもある。後古典期は1000年~スペイン人侵略前でこの時期までマヤ文明は続いていた。

古代メソアメリカは農業を基盤とし、文字、都市、宗教、王など旧大陸の四大文明と同様の特徴も有していたが、政治的には統一されなかった。古代メキシコ文明と一言で言っても、アステカ、サポテカ、トルテカ、オルメカ、テオティワカン、東のユカタン半島ではマヤ文明が繁栄した。こうしてメソアメリカ文明は複合的な文明を形成していったたの対して、中央アンデスを征服・統一したインカ帝国とは対照的である。

古代メソアメリカではアンデス文明と同様、鉄器が開発されず実用化されることはなかった。家畜は南米ではアルパカ、リャマのようなラクダ科の動物がいたが、メソアメリカでは犬と七面鳥ぐらいで馬や羊のような大型の家畜がいないのも特徴的である。

一方で文字のなかったインカなどのアンデス文明とは対照的にアメリカ大陸でメソアメリカ文明のみが文字を発達させていた。特にマヤ文明では文字、暦、算術、天文学などを発達させ、インダス文明と並び、ゼロの概念を独自に発明していた。またテオティワカン文明(前100年~600年)は大規模なピラミッドとともにローマに匹敵する巨大都市を発達させていた。

巨大な文明は大河川を有するが、メソアメリカでは熱帯雨林からサバンナやステップといった半乾燥地帯まで広がっていた。そのため、環境に合わせて中小河川、湖沼、湧き水を利用した灌漑農業であり、大規模な河川に頼らなかったのも特徴的である。モンテアルバンを中心に栄えたサポテカ文明(前500~750年)に関して言えば、水不足悩まされる山上都市であった。

16世紀以降、スペイン人の侵略により古代メソアメリカ文明は破壊された。しかいその先住民族はさまざまな形を変えながら今日まで生き続けている。

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