El Cid Campeador

第17回 エル・シッドの物語


El Cid Campeador

中世スペインの叙事詩「わがシッドの歌」(西:Cantar de mio Cid)はレコンキスタの中世スペインに実在の騎士エル・シッドの活躍をテーマとしている。

エル・シッド(El Cid)の本名はロドリゴ・ディアス・デ・ビバル(Rodrigo Díaz de Vivar)といい、11世紀後半のレコンキスタで活躍したカスティーリャ王国出身の貴族である。

エル・シッドはスペイン北東部のブルゴスの片田舎で生まれた。カスティーリャ王国の下級貴族として後に暗殺されたサンチョ2世の下で活躍するが、続くアルフォンソ6世の下でカスティーリャ王国から追放を受ける。シッドはイスラム勢力の侵攻からアルフォンソ6世の窮地を救ったにもかかわらず、である。

一説によると先王サンチョの暗殺犯人ではないという旨の宣誓をシッドからさせられたアルフォンソ6世の怨恨とも、シッドを憎む家臣のアルフォンソへの讒言(ざんげん)とも言われる。のちにアルフォンソ6世とは和解している。

アルフォンソ6世に追放されたシッドは彼を慕う兵士と共に各地を転々とした後、軍事上の要衝でもあり、アルフォンソの所領からも離れていたバレンシア地方をイスラム教徒から奪還。ムラビート朝の攻撃からバレンシアを守り抜いた。

エル・シッドのCidとはアラビア語アンダルス方言で「主人」を意味するスィーディに由来、当時は身分のある人物への敬称として用いられていた。レコンキスタの英雄の1人としてみなされるエル・シッドであるが、反イスラム主義ではなく、イスラム教徒とも親しくしていたという。事実、追放の最中、サラゴサのタイファ(イスラム教の群小王朝)に身を寄せ、アラゴン王国への侵攻の指揮を取っている。

エル・シッドの叙事詩には数々の伝説が登場するが、中でも有名なものはシッドの二振りの剣である。

1つは「炎の剣」を意味するティソーナ(TizonaまたはTizón )。バレンシアでモロッコのイスラム武将ブカルを銘刀コラーダでエル・シッドが打ち破りこれを得た。

物語の中では妖精が鍛えたというティソーナは装備者の強さによって剣の強さが変化し、敵にふさわしくない者に恐怖させるという。カリオン伯の子供達が手に持っていた場合、剣も過小評価されるが、エル・シッドが貸したティソーナが臣下の強者ペドロ・ベルムデスの手にあるのを見ると、カスティーリャ伯フェルナン・ゴンサレスはティソーナを見て戦慄し戦わずして降伏する。

もう一振りの剣は先に登場したコラーダ。coladaとは金属の鋳造を意味し「acero colado(鋳鋼)」に由来する。バルセロナ伯爵ベレンゲールをエル・シッドが打ち破りコラーダを獲得という。

ティソーナはマドリッドの軍事博物館に保管されていたが、現在はカスティーリャ・レオン州が購入し、ブルゴスの博物館で展示されている。科学的に分析された結果、11世紀のコルドバで鋳造されたダマスカス鋼の造りであることが判明している。どうやら妖精が鍛えたのではなかったようだ。

こんな記事も読まれています